引越し前夜
告白すると、家族がうっとおしくて堪らない、と思ってしまった。
家を出られてせいせいするわ、と。
父はいつも機嫌が悪い。
母は見事に父に引っ張られ機嫌が悪い。
子供らは、それを察して俯いている。
俺も大概ではあるのだが。
なんだか、硬質で、歪んだ家族だ。
自由の気風が、全くないのだ。
亭主関白で、いつも、顔色を伺っている。
父の機嫌に雰囲気は左右される。空気が支配されている感覚だ。
俺の、上の立場の人間の機嫌を伺い顔色を伺う性質は、父の存在によって育まれた。
俺は、父の機嫌が良くなる選択を繰り返してしまった。高校。大学。留学。
就活は、自分の意思で決めきることはできなかったにせよ、父の呪縛から逃れ、前向きであれたと思う。
俺の時間は俺の時間である。そういう主体性を、俺はこれから、ゼロから、育てていく。
これは、大変なことだ。
この年齢になって、主体性を育むというのは、大変なことだ。
でも、いつだって気付いた時がスタートだ。
それで、よいんだ。自分自身に、自信を持って自覚的になれたのは、ここ最近の2ヶ月ちょっとだ。そして、この2ヶ月は、悪くない2ヶ月だった。
だから、自分にもっと意識的になろう。
誰かの顔色ではなく、自分の信じるところと情報に従っていよう。
不必要に機嫌悪くはならないこと。
極力穏やかでいること。
先手必良で、且つ協力すること。
自分のイライラに客観的であること。
「機嫌が悪い」原因は、大抵コミュニケーション不足だから、先手必良で、きちんと話すこと。
先手必良で、自分からアクションを起こし、またより良い状況のためにこちらがしなやかに変化すること。
他人には他人の「理想のシナリオ」がある。
人の話=シナリオをよく聞き、また読むこと。
そして、必ずそこに思いを馳せてみること。
「人は皆違う」と心得ること。
思考も知識基盤も背景も全て違うということ。
思い通りになるものは少ないと知ること。
コミュニケーションは、とても複雑で豊かであると知ること。
他人は、思い通りにはならないこと。
自分のことは、思い通りにできると知ること。
だから、他人とは、自分の変わり方によっては、分かり合えること。
自分と他人は、宇宙から見たら同じようにちっぽけな動物で、全く対等であること。
本当は勝ちも負けもないこと。
だから、他者の幸せを、素直に喜べる心を磨き上げること。
責任を外に求めず、内に求め続けること。
外への愚痴を思っている自分を発見したら、深呼吸をしたり、前を向く文章を書いたり、体を動かしたりして、正しく(無闇に責めず、元気を取り戻せるよう) 労わること。
時間に意識的であること。
出来事が通り過ぎていくのを実感していること。
始まりがあれば必ず終わりがあると知ること。
変化の時が、必ず来るということ。
いい出来事を過ごすことが、いい時間を過ごすことであると知ること。
何が「いい」のかを、時々チェックすること。
感性と価値観を研いでいること。
よいと思ったら、よいとすること。
今のあり方が、出来事(時間)か、40代の人格に繋がっていくことに意識的であること。
そして、自分は今、60年の人生を走っているまだまだまだまだ途中であるということ。
ちっぽけな若者は、きっと大きくなれること。